歌集、「芒たり」より。
作者、三浦礼子さん。新潟県上越市在住。
朝日新聞の歌壇で、入選した短歌を一冊の本にして
自費出版したもの。
「ひとり住み夜半を米磨ぐ窓の外に淡きみどりのうまおいのかげ」
夫は他界し、子供たちも家を巣立った。
夏が過ぎ、秋が来る。
明日の朝のために、夜中、コメを磨ぐ。
随分近くで、すいっちょん、と虫の声がする。
目を上げると台所の窓のさんに、ぼんやりと、薄緑のうまおいの影があった。
この年になると、情景がとても胸に迫る。